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皆さんは「垂直農業」と聞くと、何をイメージするでしょうか。ズラッと並んだ棚に敷き詰められた野菜、ピンクや青のLEDライト、真っ白な作業着に身を包んだ作業員たち、、、

最近は植物工場とも言われており、関係者以外は立ち入ることが出来ない、少し不思議なところと思われる方も少なくないでしょう。LEDライトの色もあり、なんだか親しみが持ちにくいと思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。

そんな少しミステリアスな雰囲気を持つ垂直農業ですが、実は都市に住む人々と農業をつなぐ可能性を秘めているのです!

そもそも垂直農業とは?

垂直農業って何だろう?と疑問に思われる方もいらっしゃると思いますので、まずは簡単にご紹介したいと思います。

垂直農業とは、名前の通り高さを利用して作物を育てる農法です。これにより、ビルや空き部屋などの狭いスペースでも多くの量を栽培することが可能になり、面積によっては従来の畑の収穫量よりも数倍多く収穫することが可能になります。また、多くは室内で栽培する環境制御型農業であり、土を使わずに栽培をするのも特徴です。

栽培方式は様々で、

①液体溶液と水を根に浸して栽培する水耕栽培

②液体溶液と水を間欠式で根にスプレーして栽培する噴霧耕栽培(エアロポニック)

③水耕栽培をベースに魚の排泄物を養分として栽培するアクアポニック

などがあります。

ざっくりと一文で説明しましたが、水耕栽培は聞いたことがあるという方、もしくはご自宅で実践されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

これらの方法で栽培をする垂直農業ですが、最近では主に海外を中心にサスティナブルな農業として評価が高くなっています。

その大きな理由としては、従来の畑に比べ水の使用量が1/10程度になること、そしてビルなどの建物を利用することで都市でも栽培を可能にし、フードマイレージ(生産地から食卓までの距離)の低減などがあげられます。また、近年の異常気象の影響により、年間を通じた安定供給もメリットの一つです。

様々なポテンシャルに溢れた垂直農業ですが、全てが完璧というわけではありません。先ほどサスティナブルな農業として注目されているとしましたが、実はそこが落とし穴でもあります。

もちろん、水の使用量が大幅にカットされたり、農地を切り開く必要がなかったり、農薬の使用量が削減されたり、、、これらはサスティナブルと言えるでしょう。

ただ、私たちが見落としてしまいがちな点は、LEDライト等のエネルギー利用です。

多くの垂直農業は膨大な電力を消費するため、温室効果ガス(GHG)の排出がどうしても多くなってしまいます。温暖化が大きな問題とされる今、GHG排出はしっかりと対策を考えなければならないことだと言えるでしょう。しかし逆に言えば、これらが解決すれば、垂直農業は今後のフードサプライにおいて重要な役割を担う可能性があります。

実際に、再生可能エネルギーや嫌気性消化などを安定した供給源とするために、世界では様々な研究が行われています。よりグリーンな栽培が可能になる未来も遠くはないかもしれませんね。

実は植物工場だけじゃない!おしゃれな垂直農業

さて、前置きがとても長くなってしまいましたが、垂直農業には実はこれまでお話ししてきた植物工場だけでなく、屋外で太陽光を利用して栽培する方法もあるのです。

(タワーガーデン, Adobe stock image.)

このような形の垂直農業は一般的にタワーガーデンと言われており、欧米諸国を中心に研究や実践が広まっています。今までイメージしてきた工場的な垂直農業とはかなり雰囲気が違いますね。

これらのタワーガーデンは、移動が可能なため、天候や季節に合わせて室内外で栽培することができます。そして何より、企業だけでなく誰でも実践することができる垂直農法です。ご自宅や学校、オフィスなどでも栽培できますし、もちろんカフェなどの飲食店でも取り入れることが出来ます。

AgrotonomyTower Gardenにはさらにたくさんの用途方法が掲載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってください。皆さんが持っているイメージを大きく覆す先駆的なアイデアがたくさんあるはずです。

これらを駆使できれば、都会でも採れた野菜をその場で食べられるFarm to Tableを実現できると思います。また、タワー式なので果菜類も栽培しやすくなり、お花などの植物を栽培するとインテリアとしても利用することが出来ます。広い敷地がない場所や、都市部などの土壌が少ないところでも、簡単に取り入れることが出来ますね。垂直農法は、そのユニークな形を活かして、人々の生活に小さな農業をもたらすことが出来ます。

日本ではタワーガーデンのような小規模な垂直農業はまだあまり確立されていませんが、東京都にある銀座伊東屋さんのように、商業ビル内で室内型垂直農業を実施し、併設されたレストランで収穫された野菜の提供を始めているところもあります。今後は欧米諸国や伊東屋さんに続き、様々な企業が都市でのFarm to Tableの流れを作っていくかもしれません。

まとめ

今回は近年注目されている垂直農業についてお話ししました。気候変動が年々農作物に影響を及ぼしている中、従来の農業と垂直農業を併用することでその影響を低減できるかもしれません。そのためには、エネルギー利用について考えなければなりませんが、良策が確立されれば、農業だけでなく私たちの生活にも大きな革命を起こせるはずです。

垂直農業=植物工場という少し堅苦しいイメージがおありだったかもしれませんが、実は多種多様な形態で実践されています。特にタワーガーデンは、都市部に住む人々にも簡単に野菜や果物を栽培できる機会を提供することができ、都市部の人口が増えるとされる将来において、そのポテンシャルを発揮できるかもしれません。

地球沸騰化と言われるこの時代において、私たちの生活や食のあり方は色々な選択肢を交えながら少しずつ変わっていきます。それと同時に農業のあり方にも、様々な選択肢が必要になり、多方面からより良い未来への道を模索していくことが大切になるでしょう。

その過程では、マイナスな部分ばかりを見つめるのではなく、ワクワクするような取り組みにも着目していきたいものです。

今後も私たちKYOTOVEGANは、食の観点から様々な可能性や取り組みを見出し、明るい未来を迎えるために尽力いたします。

(参考資料)

Arrell Food Institute. (2022). FeedBack: Examining the environmental footprint of vertical farming.

Future Growing. (2013). Americans Demanding Local, Sustainable Tower Garden Produce at Restaurants.

 

(執筆:酒井)

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