最近は、〇〇×観光という発想で、様々な文化や伝統に想いを馳せることがあります。
そして、様々な観点から文化や伝統を眺めていると、京都で暮らしている人にとっては身近で溢れているものにこそ、実は、観光資源のとしての可能性があることに気がつかされます…
そんな中、今回は古くから京都に根付く京野菜について考えを巡らせてみましたので、共有させていただきたいと思います!
*今回の記事では、京野菜を「京都で育った地元の野菜」というように、広い意味で扱います。
厳密な京野菜の定義とは異なることもありますが、ご理解いただけますと幸いです。
京野菜の歴史と文化的背景
京野菜は、日本の古都・京都の豊かな歴史と文化に根ざした特別な野菜の総称です。
その起源は平安時代にさかのぼり、宮廷料理や寺院の精進料理に欠かせない食材として発展してきました。そして江戸時代になると、京都は農業技術の中心地となり、多様な野菜の品種改良が進められました。こうした背景で、京野菜は豊かな味わいと、土地に根ざした歴史を持つようになり、今もなお多くの人々に愛されています。
京野菜の魅力と特徴
京野菜の大きな魅力はその多様性と独特の風味や食感にあると感じます。
例えば、九条ねぎ、賀茂なす、伏見とうがらし、壬生菜、聖護院だいこんなど、それぞれが、一般的な野菜とは一味違う独自の風味と食感を持ち、料理を彩ります。また、京都の肥沃な土壌と清らかな水が野菜を育むことで、京野菜は高い品質を保ち続け、手間暇かけた伝統的な栽培方法や、農家の技術と経験も京野菜の特徴の一つです。
勿論、季節感も京野菜の大きな魅力になります。春にはたけのこ、夏には水茄子、秋にはさつまいも、冬には九条ねぎといった具合に、四季折々の野菜を楽しむことができ、京都の旅館や料亭では旬の味わいを最大限に引き出した料理が多く提供されています。
日本料理との深い関係
京野菜は京料理と切り離せない関係にあることは、周知の事実かもしれません。
まず、懐石料理では京野菜の持つ独特の風味や食感が活かされ、地元の旬の食材を大切にする哲学が根底にあるため、京野菜はその中心的な役割を担います。また、動物性食品を使わない精進料理では、それこそ野菜が料理の主役ですし、栄養価の観点からもとても重要な食材となります。
さらに、京野菜は広く流通しているので、一般家庭でも多く使われ、煮物や漬物、炒め物など、さまざまな調理法で楽しむことができ、その多様性は日本料理の幅を広げていると言えるでしょう。
海外からの観光客にとっての魅力
さて、そうしたことに頭を巡らせていると、京野菜は、海外からの観光客にとっても大変魅力的な存在となり得ると思うのです。
ここまで述べてきた文脈を踏まえると、些か自明のように思えますが、まだまだ発信・発展の余地があると個人的には考えております。いつか、「京野菜を食べるために京都に来た!」という観光客が沢山現れるまでになると素敵かもしれません。
ユニークな食文化体験や日本の伝統的な食材は、観光客にとって他の国では味わえない特別な体験となりますし、料亭やレストランでの食事を通じて、京野菜のもつ意味や歴史をこれまで以上に伝えていくことで、より深く日本食に共感していただけるでしょう。事業者にとっては、それが付加価値にもつながる可能性もあると思います。
こう考えていると、京野菜ツアーとして農家訪問や料理教室を開催することもアイデアの一つとして出てきました。京野菜の栽培方法や収穫のプロセスを学びながら、実際に京都の自然や食材に触れるようなものです。
モダンラグジュアリー層と言われる今後の観光客は、より地元に根付いた体験や、日本特有の自然観に触れたいと強く思う傾向にあるので、彼らにとっても魅力的な体験となることでしょう。
KYOTOVEGANとしても度々言及しますが、ヴィーガンやベジタリアンの食事を提供するレストランも増えており、こうした選択肢があることは、食の多様性を求める観光客にとって大きな魅力です。
観光資源としての可能性
京都で育つ野菜を観光資源として活用することで、地元農家の収入が増え、地域経済の活性化につながり、観光客が京野菜を購入したり、京野菜を使った料理を楽しんだりすることで、地域全体に経済効果が広がります。そうして地域の活性化、ひいては日本の活性化に繋げながら、地元で生産される京野菜を利用することで、輸送による環境負荷を減らし、環境保護にも寄与する観光資源になり得ると思うのです。
まとめ
ここまで長々と述べてきましたが、改めて、京野菜がその歴史的価値や食体験、農業体験を通じて、多くの観光客を引きつける魅力を持っていると感じました。具体的な施策についてはまだ深掘りきれていないですし、各事業ごとにもアプローチする方法は異なってくるでしょう。
ホテルやレストランであれば、これまで以上に多様な京野菜を扱い、それらの意味や歴史も合わせて観光客に伝えること。旅行代理店であれば、京野菜を通じた企画を新たに検討してみることなど。その方法は様々ですし、KYOTOVEGANとしては、農家さんのご紹介や野菜の特徴や歴史観点、今後の観光トレンドや企画立案でお力添えできることもあるかと思います。
そして何よりこの記事でお伝えしたかったことは、地元の方々にとっては身近なものにこそ、観光の魅力が秘められているということです。京都の観光としては、神社仏閣・歴史的な建造物に目が行きがちですが、ごく日常的なものにも、その土地の文化が集積していることも往々にしてあると思います。
まだまだ可能性のある一つの引き出しとして、今回は京野菜(京都で育つ野菜たち)という観点をご提案させていただきました。ここまで読んでいただきありがとうございました。
(編集担当:村野)