ヴィーガンと脱炭素について、改めて解説します
ヴィーガンと脱炭素。
既にこれらの関係性はご存知である方もいらっしゃるかと思いますが、「実は…具体的にどのように関係しているのか、他人に説明できるほどではない…」という方に、改めてヴィーガンと脱炭素の周辺にあるアレコレをご紹介していきます。
なぜ脱炭素が重要なのか
これは周知の事実かもしれませんが、地球温暖化の進行に伴い、私たちの日常生活が環境に与える影響を無視することはできなくなっています。
地球温暖化は、地球の平均気温が上昇する現象であり、その主な原因は人間活動による温室効果ガスの排出です。そして、温室効果ガスには、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)などが含まれ、これらのガスは大気中に蓄積され、地表から放射される熱を吸収し、地球の温度を上昇させます。その結果、異常気象の増加、海面上昇、生態系の破壊などが引き起こされ、人類を含む多くの生物に深刻な影響を及ぼすことになるのです。そういった文脈から、将来も人間を含めた沢山の生き物がこの地球上で生きてゆくために、脱炭素にまつわる活動が必要とされているのです。
ヴィーガンと脱炭素の関係
ヴィーガンと脱炭素はどのように関わっているのでしょうか。
ヴィーガン食は動物性食品を含まない食事法であり、その主な特徴は植物性食品のみを食べる点です。これにより、動物性食品の生産に伴う温室効果ガスの排出を大幅に削減することができるとされています。実際に、リーズ大学の研究によれば、肉を食べる人の食事はベジタリアンの食事よりも約60%多くの温室効果ガスを排出しているそう。これは、菜食が脱炭素に貢献するという証拠となります。
どうして植物性の食品が動物性の食品よりも温室効果ガスの排出が少ないのでしょうか?どうして食肉生産は環境負荷が比較的に大きいのでしょうか?
食肉生産の環境負荷は多岐にわたりますが、観点は大きく二つあります。
まず、家畜を放牧するためには多くの土地が必要であり、その多くは森林伐採によって開拓されていることです。例えば、ここ40年間の間にアマゾンの森林の70%が消滅していることが報告されています。これは、牛・豚・鶏などの畜産業を営む場所や飼料を栽培するための土地が必要だからです 。そうして森林が食肉生産によって減少していくと、森林が吸収する二酸化炭素量が減少し、故に地球の大気中の二酸化炭素量が増えていくのです。
二つ目は、家畜は消化過程でメタンガスを排出することです。メタンは二酸化炭素と比較して、温室効果が25倍以上強力なガスであり、地球温暖化の進行に大きく寄与するとされており、家畜が生きる上でメタンガスを大量に放出していることは、地球規模で見るとかなりの影響力となります。また、リーズ大学の研究では、食事関連の温室効果ガス排出量のうち、32%が肉類、14%が乳製品によるものであることが分かっています 。
ヴィーガン食の社会的な導入により、動物性食品の生産に伴う温室効果ガスの排出が削減されるだけでなく、必要な土地や水資源も大幅に減少します。植物性食品の生産には、動物性食品に比べて約1/10の土地しか必要としません。これにより、森林伐採の減少や水資源の節約が期待されるのです。
ヴィーガンを通じた脱炭素への取り組み
そうかと言って、全員がヴィーガンになるべきだという極論を支持したいのではありません。ヴィーガンやベジタリアンの食生活を完全に取り入れることが難しい場合でも、肉の消費量を減らすことは環境負荷の軽減に寄与します。たとえば、「ミートフリーマンデー」といった運動は、週に一度だけでも肉を避けることで、温室効果ガスの排出量を減らすことに貢献する活動の一つかもしれません。
また、地域で生産された季節の野菜や果物を意識して選ぶことも、輸送による温室効果ガスの排出を減らすことにつながります。その土地に根付いた旬の野菜を地産地消することは、環境への負荷をさらに低減させる有効な方法なのです。
持続可能な未来への選択
ここまで述べてきたように、持続可能な未来を目指すためには、個々の選択が重要です。そして、肉食の頻度を減らし、植物性食品を多く取り入れることは、環境への負荷を軽減する有効な手段となります。
最後にお伝えしたいのは、今まで述べてきたことは決して、今日から動物性食品を日常から無くそうと言っているのではないということです。重要なのは、動物性と植物性のバランスが、地球環境の観点からすると今は動物性の方に偏りすぎている..そして地球規模の脱炭素にも植物性のライフスタイルはポジティブな影響を持つ、ということです。可能な範疇で肉の消費量を減らし、植物性食品を増やす選択は、私たち一人ひとりができる持続可能な未来への第一歩だと思います。そしてご存知の通り、今よりも植物の比率を高めた食生活は、私たちの健康にも寄与するでしょう。そういった動きに、社会として・会社として・一個人として取り組む人たちが、少しずつでも広がっていくことを願っています。
【参考資料】