インドのビーガン市場が示す成長とビジネスの未来
人口&ベジタリアン数が世界一のインドに注目
インドは、その文化や宗教的背景から長い間、菜食主義が根付いている国ではありますが、近年、ヴィーガン市場が急速に拡大しています。
この傾向は、根付いた菜食主義の影響やインドの人口増加の影響も大きく寄与してはいますが、健康志向や環境意識の高まり、動物福祉に対する関心の増加によっても、強く後押しされています。
インドのヴィーガン市場の現状
世界のヴィーガン市場規模は2028年に613億5,000万米ドルに達し、インドでは2030年までに333億米ドルに達すると予想されています。これは他の食品セクターと比較しても非常に高い数値です。参考
インドは人口の9%がヴィーガンとされ、ベジタリアンまで含めると3割近い人たちが動物性の食品と一定の距離を保った生活をしています。そしてその割合は世界で最も多いのです。
この市場拡大には、インド国内の消費者の嗜好の変化も大きく影響しています。伝統的な菜食主義に加え、動物性食品を完全に排除したビーガン食への関心が高まり、乳製品の代替として植物性ミルクやヴィーガンチーズなどが人気を集めています。特に、2020年からの新型コロナウイルスのパンデミックが、消費者の健康志向をさらに強め、ヴィーガン製品への需要を押し上げました。
また、国内外からの投資も活発化しており、多くの企業がヴィーガン製品の開発や販売に注力しています。これにより、商品の品質やバリエーションが向上し、より多くの消費者が手軽にヴィーガン食品を選択できる環境が整ってきています。
この成長は、人口増加や中産階級の拡大に伴い、より多くの消費者がヴィーガン食品を選択するようになることでさらに加速する中、インド特有の豊富な植物性食材や伝統的な調理法を活かしたヴィーガン料理が、国内外での人気を高めることで、インドが世界的なヴィーガン市場の中心地となる可能性もあります。
この事実をどう捉えるのか
この事実を、日本に/京都に暮らす僕たちはどのように捉え、今後にどのように活かしていけばよいのでしょうか。
ヴィーガン市場の拡大は、まだまだ継続し続ける。
食の業界にとどまらず、 企業としてライフスタイルを提案していく事業を営んでいる場合、 ヴィーガン、広く言えばエシカルのような文脈は(特に海外からの観光客の多い京都と言う土地では)無視できないものであり、今後もより一層対応を迫られることとなるでしょう。
また、文化圏によって植物性のライフスタイルの多様性が現れてくるのではないか、という観点もあると思います。
今現在では、ヨーロッパやアメリカなどの欧米を中心としてヴィーガンにまつわる飲食店や食品が増えてきましたが、今後、インドやアフリカ、東南アジアや東アジアのヴィーガン市場がより活発になってくるにつれて、その商品たちにローカル性、つまりその土地の文化や地域性に根付いた特徴が、今後顕著に現れてくる可能性もあります。
というのも、欧米が中心となって拡大していたうちは、あまり感じられなかった商品間の差異も、その他、欧米とは根付く文化の特徴が大きく異なる地域で市場が拡大し、ヴィーガンが研究・開発されることで、その土地らしい特徴が消費者にも分かりやすい違いとなって現れてくるように考えられるからです。そういった中で、日本の植物性のライフスタイルはどのような特徴を持っているのでしょうか。それは単に和食や精進料理、和菓子と言うジャンルにとどまらないかもしれません。
うまみや食材、伝統工芸や伝統行事など、より生活そのものに接近した観点で、日本らしい植物性ライフスタイルが僕たちのヴィーガン市場を形成することにつながるのかもしれません。
今回のコラムでは、何か特定の仮説や解決策を提示する事はできませんが、少なくともインドのヴィーガン市場の拡大と言う1つの事実によって、世界的な潮流を改めて認識したいと思います。と同時に、簡単ではありますが、定量的な現状の共有することで、少し視野を広げる一助となれば幸いです。KYOTOVEGANとしても、引き続き考えを皆さんと深めていきたいと思いますので、ぜひ一度ご連絡いただければ嬉しいです。
(編集者:村野)