最近見かける「オーツミルク」って何?——おいしくてやさしい、新しい選択肢

最近、スターバックスやブルーボトルコーヒーをはじめ、カフェなどで「オーツミルクラテ」というメニューを目にすることが増えたと感じた方も多いのではないでしょうか。豆乳やアーモンドミルクと並び、植物性ミルクの一種として急速に認知度を高めているオーツミルク。
けれど、「オーツってそもそも何?」「どうして今こんなに注目されているの?」と、まだピンとこない方も少なくありません。
このコラムでは、そんなオーツミルクの正体と、その魅力、さらにヨーロッパを中心に高まっている人気の背景を、健康・文化・環境の視点から読み解いていきます。
最近カフェで見かけるオーツミルクってなに?
「オーツミルク」は、オーツ麦(日本語では“オーツ麦(燕麦)”)という穀物を水に浸し、濾して作られた植物性ミルクです。ほんのり甘く、クセがなくまろやかな味わいが特徴で、コーヒーや紅茶に合わせても素材の風味を引き立ててくれます。
オーツ麦といえば、健康志向の朝食として人気の「オートミール」を思い浮かべる方も多いでしょう。その同じ素材から作られているため、栄養価も高く、消化にもやさしいという特長があります。
カフェ業界では、従来の牛乳や豆乳に加えて、「第3のミルク」として注目されており、ヴィーガンだけでなく、乳製品にアレルギーのある人、環境配慮を重視する人など、さまざまなニーズに応える選択肢として急速に浸透しています。
オーツミルクって栄養あるの?どんな効果?

オーツミルクは、他の植物性ミルクと比べても、栄養面で優れている点が多くあります。
まず注目したいのが「βグルカン」という食物繊維。これはオーツ麦に特有の水溶性食物繊維で、腸内環境の改善に寄与するだけでなく、血糖値の急激な上昇を抑える、コレステロールを下げるなどの効果が期待されています。特に欧米では、心臓病や糖尿病の予防のためにβグルカンを積極的に摂る食生活が広がっています。
また、オーツミルクにはビタミンB群、植物性タンパク質、カルシウムなどのミネラルが含まれています。脂質は少なめで、コレステロールもゼロ。ダイエット中の方やコレステロール値が気になる方にも嬉しい飲み物です。

動物性ミルクとオーツミルクの違いは?
動物性ミルク(いわゆる牛乳)との違いは、まず「動物を介していない」という点です。
そのため、動物性食品を避けたいヴィーガンの方や、宗教的理由で乳製品を摂らない方にも対応可能です。
もう一つ大きな違いは、「乳糖を含まない」こと。日本人の約8割が乳糖不耐症(ラクトースに対する消化酵素が少ない)とも言われており、牛乳を飲むとお腹がゴロゴロするという方も多いはず。オーツミルクはその点でも安心して飲むことができます。
加えて、風味や使用感にも違いがあります。牛乳は動物由来の脂肪分でコクが強いのに対し、オーツミルクはより軽やかで、後味がすっきり。自然な甘みがあるので、砂糖を加えなくても満足感があります。
カフェでのラテやカプチーノにも最適で、特に“バリスタ向け”に開発されたオーツミルクは、フォームのキメも細かく、ミルクアートにも適しています。
ヨーロッパでのオーツミルク人気が高まっている理由

オーツミルク人気の先駆けとなったのは、スウェーデン生まれのブランド「Oatly(オートリー)」です。1990年代に設立されたこの企業は、当初は学術研究機関との共同開発からスタートし、現在では世界40か国以上に展開しています。
特にロンドン、ベルリン、アムステルダムなどの大都市では、カフェで牛乳よりオーツミルクがデフォルトになっているところもあるほど。(私はロンドン留学中にカフェでバイトをしていたのですが、カフェラテの注文が入ると「Oat Milk or Regular Milk ?」と必ず聞いていました。)
背景には、ヨーロッパ全体での「持続可能な食」への意識の高まりがあります。
また、ヨーロッパでは早くからベジタリアンやヴィーガン文化が浸透しており、学校給食や病院食にもプラントベースの選択肢の導入が進んでいるほど。
その中で「おいしい」「栄養がある」「泡立ちが良い」「環境負荷が少ない」といった複数の条件を満たすオーツミルクは、自然とスタンダードな存在になっていきました。
環境への意識が高いヨーロッパ社会

オーツミルクが注目されるもう一つの理由は、その「環境へのやさしさ」です。
牛乳の生産には大量の水や飼料、土地が必要とされるだけでなく、牛の消化過程で温室効果ガスであるメタンが大量に排出されることも、地球温暖化への影響として指摘されています。例えば1Lの牛乳を作るのに必要な水の量は550Lほど(環境庁:仮想水計算機より算出)。
一方、オーツミルクの生産には比較的少ない水と土地で済み、環境負荷がぐっと低く抑えられます。たとえば1リットルのオーツミルクを作るのに必要な水は、牛乳の10分の1以下だとする研究もあります。
ヨーロッパではこうした「ライフスタイルとしてのエシカル消費」がすでに広がっており、ミルクを選ぶという日常的な行動が、環境へのアクションにもつながっているのです。
今日はオーツミルクにしてみよう
ただ、今日はオーツミルクの気分だな。今日はオーツミルクにしてみよう。
そんな何気ない選択が、実は「自分の身体をいたわること」「誰かの価値観に寄り添うこと」「環境の未来を思うこと」につながっているかもしれません。
オーツミルクは、単なる流行ではありません。
それは小さなやさしさの積み重ねが生んだ、新しいスタンダード。
完璧である必要なんてありません。日々の暮らしの中で、少しずつ、自分にとって心地よい選択を重ねていくことが大切だと思います。
いつものカフェで、いつものラテを、今日はオーツミルクにしてみる。
その一杯から始まる新しい視点とつながりを一緒に考えてみませんか?
執筆:久田愛理
KYOTOVEGAN は、
・生物多様性を大切にします
すべての生きものが互いに違いを活かしながら、つながり調和していることを意識して活動します。
・ネイチャーポジティブを目指します
Nature Positive (自然再興)自然と共生する社会の達成に向け、社会や経済の活動によって、自然生態系の損失を食い止め回復させていく行動をし、仲間を応援します。