×CLOSE

結婚式は、人生の中でもっとも華やかで、心あたたまる瞬間のひとつです。とりわけ、インドの「ビッグ・ファット・インディアン・ウェディング」と呼ばれる豪華な結婚式は、色鮮やかな衣装、伝統舞踊、豪華な料理、壮大な装飾といった文化的魅力にあふれ、国内外から注目されています。

しかしその裏側で、あまり語られることのない「静かな環境破壊」が進行していることをご存知でしょうか。今回取り上げるのは、India Todayが2025年6月に報じた「The Big Fat Indian Wedding Is Quietly Triggering a Climate Chaos」という記事です。この記事は、豪華な結婚式が生む食料廃棄とその気候変動への影響を明らかにし、文化とサステナビリティの間で揺れる現代社会に警鐘を鳴らしています。

華やかさの代償──結婚式と気候変動の意外な関係

インドの結婚式には、伝統的な価値観だけでなく、経済成長とともに膨らんだ「見栄」や「ステータス」の象徴という側面があります。ゲストの数は数百人、時には千人を超えることもあり、提供される料理の種類は数十から百以上に及びます。

こうした式典では、1回の式で30〜50kgの食料が廃棄されることが一般的で、上流階級ではその量が800kgに達することもあると報告されています(NGO「Feeding India」調べ)。この廃棄された食料は埋立地で分解される際に大量のメタンガスを排出しますが、これはCO₂の約80倍の温室効果を持つ気体です。

実際、国際連合環境計画(UNEP)は、メタンガスが産業革命以降の地球温暖化の約30%を引き起こしていると指摘しています。私たちは、祝福の料理を前に笑顔を浮かべながらも、無意識のうちに気候危機の一端を担ってしまっているのかもしれません。

「もったいない」に込められたヴィーガン的視点

この問題は、単なる食料の廃棄ではなく、もっと根本的な価値観の問い直しを私たちに促しています。それは、「必要以上に求めること」が果たして本当に幸せにつながるのか?という問いです。

ヴィーガン的価値観のひとつに「共生」があります。それは人間同士だけでなく、自然や動物、そして社会的に不利な立場に置かれた人々ともつながり、調和して生きることを意味します。世界では毎年10億トンの食料が廃棄される一方で、約7億8,300万人が飢餓状態にあります。これは単なる数字の話ではなく、私たちの「選択」が遠く離れた誰かの暮らしに影響しているという事実を映し出しています。

かつて日本でも、食材を大切に扱う「もったいない」という言葉が強く根付いていました。これは単に物を節約するという意味ではなく、資源への敬意や感謝の心を含んだ価値観です。豪華な式典の中にも、そうした思いやりの精神が取り戻されれば、結婚という祝福の場が本当の意味でサステナブルになるのではないでしょうか。

希望の芽──小さな変化が文化を変える

インド国内では、すでに前向きな変化も始まっています。COVID-19の影響により、小規模かつ家族中心の結婚式が一時的に定着し、それが「新たな常識」として支持されつつあります。また、インド食品安全基準局(FSSAI)は、信頼できるNGOにのみ余剰食料の寄付を認可する制度を整備。さらにデリー州では2018年からゲスト数に上限を設ける法制度が導入され、食料廃棄の削減に成功しました。

こうした動きは、「豪華でなければいけない」という無意識のプレッシャーから人々を解放し、「本当に大切なこと」に立ち返るきっかけを与えてくれます。

昔の日本にもあった“見栄の結婚式”

このようなインドの課題は、私たち日本人にとっても決して他人事ではありません。
かつて日本でも、バブル経済期を中心に、結婚式は「人生最大の見せ場」とされ、華美な演出や過剰な消費が当たり前のように行われていました。

たとえば、1日に何度も衣装を替える披露宴、天井まで届くような装花やシャンデリア、音楽隊や派手な入場演出――これらの多くは“一度きり”の瞬間のために大量の資源とエネルギーを投じるものでした。食品についても、ゲストの満足を気にするあまり量を優先し、料理が食べきれずに大量に残されることも珍しくなかったと思います。

また、引き出物が重複したり、使われずに棚に眠る贈答品が大量に出るなど、いま振り返れば「もったいない」の精神からは遠い光景も多くありました。

当時は「エシカル消費」や「サステナブル」という言葉がまだ一般には浸透しておらず、結婚式はどちらかといえば“親の体面”や“社会的ステータスの誇示”として機能する側面が大きかったとも言われています。本人たちの意志よりも、家や地域社会の期待が優先されることも少なくありませんでした。

そうしたバブル期の結婚式は、ある意味で日本の「大量消費文化」を象徴する存在だったのかもしれません。

しかし、時代は確実に変わりつつあります。価値観の変化が進み、若い世代の間では「自分らしさ」や「本当に大切にしたいこと」を軸に式を組み立てる動きが見られるようになってきています。

まとめ──文化と調和する新しい祝い方へ

結婚式は、人と人とが結びつき、新しい物語が始まる特別な日です。その尊さは、決して予算や装飾の豪華さに左右されるものではありません。

KYOTOVEGANでは、たとえば、植物性食材を使ったケータリングや、地域の資源を活かしたエシカルな装飾アイデアなど、小さな一歩から大きな変化が生まれることを信じています。

私たちと一緒に、「祝福」と「共生」が調和する社会をつくってみませんか。

.

KYOTOVEGANは、京都を拠点に“やさしい未来”を育てるコミュニティです。
会員限定のメルマガやイベント情報を通じて、京都のヴィーガン・サスティナブル文化を一緒に育てませんか?
👉 無料でメンバーシップに参加する

.

執筆:村野

.

参照元・リンク

India Today (2025年6月20日). The Big Fat Indian Wedding Is Quietly Triggering a Climate Chaos

https://www.indiatoday.in/environment/story/the-big-fat-indian-wedding-is-quietly-triggering-a-climate-chaos-2743215-2025-06-20

SHARE

一覧へ戻る
KYOTOVEGANのメンバーシップ

KYOTOVEGANʼs
MEMBERSHIP