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── 和の文化や季節の移ろいに惹かれ、日々和菓子をつくる者として ── 日本の文化を見つめた記録。 ──

 

先日、京都・東山にあるTHE JUNEI HOTEL Kyotoに宿泊してきました。

 

ホテル名の「JUNEI」は漢字で「壽寧」。寿ぎとやすらぎを、五感で感じる心地よさにもう一滴の感動を添えて手渡す──そんな理念が、ロゴの向日葵の“5つの種”にも託されているといいます。花言葉は「あなたを愛している。あなたを笑顔にします」。幸せの“種”をそっと蒔くという寓意に品を感じました。

 

客室はそれぞれ異なるテーマを持ち、今回は「文月」と名づけられた部屋に泊まりました。七月の古称を冠したこの空間には、夏の夜空や夕立の名残を思わせる紫の染物が掛けられ、淡い光と影の中に季節の情景が感じられるようでした。

この染物は、古来皇族だけが身にまとうことを許された幻染(Korozen)を、現代に復活させた染色技術「夢ころ染(Yumekorozome)」によるもの。太陽の光を受けるごとに色に微妙な揺らぎを見せ、単なる装飾を越えた“作品”として空間に息づいていました。障子越しの光がその布にやわらかく反射し、過不足のない設えが、言葉より先に感覚へと語りかけてくるようです。

部屋の奥には大きな檜風呂。湯面から立つ檜の香に、呼吸が自然と深くなります。自室でこの日本らしい香りに包まれる贅沢は、海外からの旅人にも忘れがたい記憶になるはず。木肌のぬくもりと湯のやわらかさが重なって、体温が静かに整っていく…そんな心地でした。

ホテルの至る所に竹が用いられていましたが、再生が早い素材としての合理と、京都の原風景を現在に結ぶ記号性。その両方を帯びている設えで、単なる装飾以上のものを感じました。

 

今回は、朝食にヴィーガンの仕出しをお願いしました。ご用意いただいたのは、ホテルからほど近い京料理の老舗「はり清」。江戸期創業、350年以上の歴史を重ねる店。早朝から丁寧に用意していただき、ふたを開けると、やさしくどこか懐かしい香りが立ちのぼります。フルーツや旬菜がふんだんに使われ、朝いちばんの身体にすっと染み入りました。旅先で土地の台所に直結する朝食は、声高な「ローカル体験」よりも、ずっと滋味深く感じます。ご馳走様でした。

旅は、良し悪しを判定するイベントではなく、自分の感受を調律する機会だと思っています。THE JUNEI HOTEL Kyoto は、こちらの感度を高めるために、余白と陰影を差し出してくれる場所でした。

 

スタッフの方々もまた、物腰やわらかに、押し付けることなく爽やかに接してくださり、その所作の端々に「壽寧」の美意識が宿っていました。その空気が空間と響き合い、滞在全体をより澄んだものへと導いてくれたように思います。素敵なお時間をありがとうございました。

 

素 shiro

村野

 

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