Saishoku-Fair 菜食フェア 老舗料亭が菜食
「京都はヴィーガン天国だね!」
東京の方に言って頂く言葉です。東京には600店舗くらいのヴィーガンも食べられるメニューがあるお店があります。が、何せ広いので目的のお店が閉まっていると違うお店までは電車で移動ということがあるようです。
京都では、今年で400店舗に近づく勢いでヴィーガンフレンドリーなメニューがあるお店が増えています。店舗数は東京より少ないですが、コンパクトシティなので店も集まっていて第二候補のお店まで移動もすぐ。更にLOOPなどのレンタサイクルが充実しているから、距離がなおさら縮まります。
「和食と鰹出汁」
お店はたくさん選べるのですが、なかなか無いのが和食。特に京料理。京都にせっかく来たのだからと、良いお店で京都らしい和食を予約しようと思っても対応いただけるお店がないのです。出汁といえば、カツオ。麺つゆはもちろん、煮物・炊き物には殆ど鰹入り出汁が使われています。ひろうすの煮ふくめ・切り干し大根の炊いたん・炊き込みご飯、、、おばんざいなどは素材は植物性だけのものは多いのですが、旨味をイノシン酸で調味する味付けが主流なので、どうしても動物性が含まれてしまいます。
京料理が挑戦する、日本料理で鰹出汁なし!
近年、海洋資源が年々乏しくなってきているというニュースを聞きます。魚の水揚げ量が減っていたり、北海道の天然昆布が地域によっては絶滅寸前だったり。そのせいで、食材がどんどん高騰していっています。
「無くなってしまいそうな資源を、使い続けていてよいのか?。私たちの世代は、未来に何を残していくのか?」
未来のために、脈々と繋がる文化を継承していくために、京都老舗店の店主たちが起こされた行動が、こちらです。
・「プラントベース和食」・・・柴田日本料理研鑽会 (記事こちら )
鰹が使えなくなる、昆布が使えなくなる、そうなったら京料理はなくなるのか?。そうではない。時代に合った選択肢を創り出すことが大切。
・「菜食Sai-Shoku」・・・京都の老舗料理店8店舗が、フェア期間中に菜食献立と文化体験を企画(webサイトこちら )
SAISHOKUを、SUSHIやTEMPURAに続く、日本食の新たな世界共通語に。現代にあったプラントベースメニューの開発。
「菜食Sai -Shoku」
1月から2月に渡り、8店舗の老舗京料理店が、京都新聞社と、「菜食フェア」を開催しました。私は、6店舗の食事と文化体験を楽しみに行ってきました。
●京料理・寿司 松廣 現代の名工みよる 京野菜細工寿司とSAISHOKU
●美濃吉本店・竹茂楼 茶の湯の世界 お茶と室礼のおもてなし
●嵐山・錦 渡月橋畔ー数寄屋造り 旬のSAISHOKU懐石
●魚三楼 鳥羽・伏見ー歴史探訪 京料理のこれまでとこれから
●山ばな平八茶屋 若狭街道の歴史と街道で生まれた京料理のこれまでと未来
●京料理 鳥米 日本最古級ーお酒の神様を祀る松尾大社と芸舞奴体験
●京料理 木乃婦 日本人の精神性 京料理にみる歴史と真髄
一般社団法人 京都食文化協会の、鳥米のご店主・田中良典さんが、全てのお店のご案内をしてくださいました。
どののお店も大変な工夫を凝らされていて、京料理らしい見た目の美しさ・各店それぞれの美味しさと個性 が、あってとても楽しくて学び深いフェアでした。
学びが深いというのは、「文化体験」をさせて頂けたこと。料理と時代背景と文化は、必ず結びついていることがよく分かりました。懐石料理の料理法やしつらえ、そもそもどういう理由で食べるようになったか、など基を知ることで、時代にあった工夫の素晴らしさが見えてきました。
SAISHOKUは、鎌倉時代からの精進料理を再注目しアップデートしただけではなく、世界の視点を料理の中に組み込まれていることも特徴的でした。
料理の時にどうしても出てくる、端材。かつらむきした大根や人参の皮や端っこ。白菜や万願寺とうがらしの芯や茎、などを捨てずにとっておき、乾燥やときには麹などを使って発酵させて、野菜出汁や発酵調味料として使うなどして、フードロスにならないようにされています。
なるべくゴミを出さないことが、環境問題に関心のある特に欧米豪の方たちにとってもお金を払う価値に繋がるのです。
また、菜食なのに昆布出汁さえ使わないという理由、海洋資源の問題を背景、を聞くと、そのお店の大切にしたいことを伝えることにもなります。ますますファンが増えるのではないでしょうか。
柔軟に時代に合わせながら、何百年と継承し続ける文化都市、京都。世界中から観光や体験をしにやってくる理由が、食の世界にもあります。